【引退特別寄稿】カセ釣り奮闘記・10年間の串本のカセ釣り(第二章:カセ釣りレッドゾーン その1)

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(石鯛竿が思いっきり伸される図、愛竿の極限の弧を描く釣りがカセ釣りレッドゾーンだ)

第二章:カセ釣りレッドゾーン

2016年6月に「浅海のグレ釣り・1000枚修行」を終えた僕は、次のステージは、実は潮岬沖のキハダチャレンジを考えていたんです。

ただ、時化でいけない事が多いし僕は船酔いもするし、チャレンジ2回目の沖釣りでは船内で転んで肩を脱臼する怪我をしてしまったんです。

感覚的に「違う方に向かっている(沖釣りは向いてない)」と思ったし、それより湾内のイワシエサの釣りで何かユニークでクリエイティブな釣りが展開できるんじゃないかと直感的に思ってました。

キハダマグロは確かに魅力的ではありますが自分発のユニークなキハダ釣りは全くイメージ出来なかったし、それゆえになんですかね、特に「釣りたい」という願望もそこまで湧いて来ないという感じでした。

「湾内のイワシエサの釣りで何か出来るんじゃないか」

こっちの方が僕の理想形(愛竿の極限の弧を描く釣り)に近いと思ったし、経験数をこなすのも現実的だし、2016年の夏の時点ではやっている人が皆無に等しかったので、ユニーク性の点では文句なしでもあったし、僕がやるんだし「この釣りに絞るべき」と思いました。

この釣りはこの3年後「カセ釣りレッドゾーン」と命名してYoutubeチャンネルで展開することになりますが、本章は、言ってみれば、「カセ釣りレッドゾーン誕生秘話」と言えます。

2016年から2017年は、巨大イズスミとかクエとかイワシエサの釣りでよく釣れたんですよ。アタリも多かったし感じも良かったし色々な事を試せて実績も出たので、この釣りを僕のトレードマークにするつもりで釣行を続けてました。

自己記録 76cm、7.9キロの超巨大イズスミ。グレと比較すると50cmクラス4枚分に相当する

「満足と納得は死んでからでも遅くない」(海信語録)

上の写真のイズスミは特筆もののサイズで、もしかすると日本記録に相当するかも知れないし、船頭も「このサイズは見たことが無い」という事で、魚拓をすすめてくれたんですが僕は断りました。

これ以上のサイズの魚体を僕は目撃してたし、何より、魚拓を取って「やったぜ」とか気持ちが納得して満足してしまうと、これ以上のモノはもう釣れない気がするんですよね。

魚拓って自分で眺めるのは過去を振り返る行為なんですよ。僕は前しか見てない釣り師になりたかったので「釣果は終わったこと」が基本形でした。ただ、渡船店や釣具店に掲載する魚拓は、それを見る人にとっては「先の事」になるし、「ああいうのを自分も釣ってみたい」と目標になるので、依頼があるとその場合は魚拓は取るようにしてました。

とは言え、さすがにこれ以上のサイズは無理っぽいし、素直に魚拓取れば良かったですかね。笑

イワシエサのフカセ釣り

3年通ってグレを1000枚釣って、串本のカセ釣りの基本はナンとなく「解ったような気はしてた」んですが、釣り物と釣り方をガラッと変えることで、さらに串本のカセ釣りの認識を深くすることは出来るような気はしてました。

また、2016年から2017年は大島港から水谷に掛けての地区で巨大なイズスミが数多く乱舞したこともあって、これをイワシエサのフカセ釣りで釣る事にここまでの釣り人生では感じたことが無いほどの強い魅力を感じてました。

秋になると同じ釣り方で青物が釣れるわけですが、梅雨から夏場に掛けて浅い海域で見える巨大魚を目指すこっちの釣りの方が、もうめちゃくちゃ迫力があるし、面白さも格別でした。(ブリ相手の方が簡単なので、そういう点でも魅力的だったです)

また、イズスミは人気の無いターゲットで本気で狙う人なんかほとんど居ないことも天邪鬼の僕にはハッキリ追い風でした。ド迫力の釣りでシンプル故の独特の難しさがあって、理想とする愛竿の極限の弧を描くような乾坤一擲の勝負が出来る。

「一生やっていたい」くらいに思いましたね。笑

イズスミ釣りは「5キロ超えると世界が変わる」ド迫力の釣りだ

夏場のイワシフカセでは巨大イズスミ以外にも、コロダイや大型真鯛、大型グレやクエ、ヒラメなど色々なものが釣れたし、「止めきれない一撃」なども数多く当たってきました。

「何が当たって来るか解らない」

もうワクワク感が半端なかったです。

巨大イズスミにみる理想像

何が当たって来るか解らない夏場のイワシフカセは、最初船の青物用ロッドをメインロッドにしてました。グラスの船竿なら12号のフロロの通しでギチギチのドラグ設定にしてもへし折られることは無いですからね。

渡船屋によって推奨するロッドの種類もまちまちなんですが、僕が利用していた大島フィッシングではデカいヤツを相手にするのは、船頭の推奨は船用の(青物)ロッドでした。というわけで、アルファタックルで4本、シマノで2本揃えてみたんですが、船用の青物対応のロッドは、確かに強いし、取り回しは良いし、釣れるのは釣れるんですが、ナンか、シックリ来なかったです。やっぱり僕の理想は「磯竿のブン曲げ」ですからね。

ある日、釣具店に行った時に、がまかつのパワースペシャルフカセの6号があったので、ちょっと見せてもらうと、いわゆる「ビビビッと来る感じ」がありました。

「いやいやいや、これを、巨大イズスミでブン曲げたら、どんなやろ?」(ワクワク・・・笑)

即座に購入を決めて、メインのロッドで使う事にしました。

このサイズ(60cmあるなし)では「この竿の相手ではない」でした

「切られるくらいならへし折られろ」(海信語録)

やっぱり磯竿を使うとけた違いに面白い。

船上では長くて取り回しが悪い磯竿は不利なことも多いと思われるかも知れないですが、この長さ(5m)に慣れているので取り回しの点でも別に扱いづらいとかも感じなかったです。それよりもこの5mの剛竿がパンチのあるヤツに伸されて4番まで水に浸かるハラハラドキドキの迫力の方がはるかに勝りました。

イズスミは色々なサイズを釣りましたが、3、4キロのサイズはグレ釣りの仕掛けの延長で上がってきても、5キロを超えると世界が変わることが解りました。

ここに掛けないと取り込めない(針は管付きヒラマサ15号)

猛烈な突進力もさることながら、歯が刃こぼれしたニッパのような形状をしているのですが5キロを超えるサイズからその鋭さが増します。針を飲まれたらアウトはこの手のターゲットでは常識ですが、5キロ越えが相手だと8号くらいのハリスでは歯に触れるだけでもアウトのような鋭さです。しかも案外賢いのでロープや小割の下など障害物に好んで逃げ込む習性があり、これを6号竿のギチギチドラグ(12号通し)で渾身の勝負に持ち込むわけです。

潮のコンディションが少し良いだけで、デカいのがドカンときて6号竿が弾ける(爆発する)一歩手前は普通にありました。この頃、理想としていた「俺の釣り(愛竿の極限の弧を描く釣り)」をガンガンやれている充実感は凄まじいものがありました。

試行錯誤からナルシストへ

夏場のイワシフカセの釣りは、上物で巨大イズスミや大グレ、底物でクエやコロダイ、真鯛などが狙えました。

6号竿に12号通しの完全フカセで底物を狙い、海上釣り堀の青物用ロッドに6号通しで上物を狙う。この場合は上物は主にグレですが、巨大イズスミが当たって来ることもあるし、爽やかに切られるのもどうかと思うので最低6号の仕掛けで、ここから落とす(細くする)ことは無かったです。

巨大イズスミは見えるところまで浮いてくれば5mから6mくらいのタナで当たるので、その場合は底物の完全フカセの道具でタナを合わせて釣ってました。

打ち返しを続け色々な魚を釣っていく中で、ターゲットによるサシエの取り方の違いや特徴が解るようになってきました。

また、サシエのイワシの残り方、取られ方などで、水の中の状況に読みを入れていく方法など、試行錯誤の繰り返しでその精度を上げていく過程は、もう面白いなんてもんじゃなかったです。

気配を察知し、「これは行くな」で構えて読み通りドカーンと入って巨大なイズスミとの格闘などは、ナルシストではないですけど、もう自分の釣りに酔いしれたりしてましたね。(いやいや、ナルシストですね。笑)

このイズスミは72cm、6.5キロ。下段のグレは「エサ取り」です。笑

「エサ取りがグレ」

イワシで当たって来るグレは良型から大型が多かったですが、50cmのグレでも、5キロオーバーのイズスミと比べたら大人と子供です。

1000枚修行の時にあれほど苦労したグレですが、この頃は当たってきたら「邪魔すんな」って怒ってましたね。笑

非常識なグレ釣り

夏場のイワシエサのフカセ釣りではグレはよく当たってきました。

「真面目にグレだけ狙ったら、どのくらい釣れるんやろ」

たらればなので意味ないですが、これはちょっと興味はありましたね。

ただ、グレを狙うと巨大イズスミにはほとんど切られてしまうので、「道具は落としても(ハリスは)6号」で、それ以下するのは2020年までは考えもしなったです。

グレは3枚から4枚に1枚で50オーバー

イワシを撒けば、もちろん35cm前後のレギュラーサイズもたくさん浮いてくるんですが、巨大イズスミに飲まれるのが嫌で石鯛針の15号とかタマミ針の18号とかでやっているので、さすがに35cmとか中途半端なサイズのグレの口にはバンバン掛るってことは無かったです。(掛かっては来ましたけどね。笑)

まあ、50cmに絡むような大グレになると口の大きさもそれなりだし、グレも大型になると獰猛になるのでサシエのイワシを腹からかぶってきて、デカい針でも丸のみにしてくるわけですよ。

「食いが渋いからグレ針の4号で」とか言っている磯釣り師には理解が無理でしょうね。(僕だって、最初は無理でした。笑)

イワシエサを食ってくるグレを釣るようになると、ここまで磯釣りや浅海の海苔グレの釣りで積み上げてきたグレ釣りの常識は崩壊していくように思いました。

どんな釣りでもそうですが、釣り人によって築き上げられてきた「常識」が受け継がれ、引き継がれて、「〇〇釣り」が形成されていくわけです。

「グレ釣り」においても、色々な地方地域の色々な名人名手が「こうあるべき」「こう釣るべき」で常識を作ってきたわけですが、「魚肉系のエサでデカいヤツだけを抽出して抜いていくグレ釣り」とか、これだけ長い歴史があってこれだけたくさんの人がやってきたのに、誰も思いつかなかったんだろうか、と、この頃は思ってました。

ペレットはイワシの魚粉がベースの練り物なので、ある意味「イワシで釣っているのと同じこと」だし、グレ用の集魚剤には「イワシパワー」なんて名前の付いたものなんかもあるし、色々な地方地域のグレ釣りも、「もう少し魚肉系のエサに寄ってもイイじゃないか」とかも思いましたが、まあこれは「余計なお世話」以外の何物でもないですね。

大半の釣り人は、常識とされるものに対しては保守派です。僕の場合は大天邪鬼で革新命が「俺の釣り」なので、俺の釣りを吹聴すれば、保守派はもうついて来れないのが普通で、保守派の常識から完全に逸脱した「俺の釣り」で、保守派が欲しくてたまらないデカいグレをボンボン抜いていくことには、ちょっとした快感のようなものはありました。

まあ、これでフェイスブックで繋がった保守系の上物師は僕からどんどん離れるようになるわけですが、「保守派と空気を共有しても意味がない」と、僕もこの頃は突っ張ってましたからね。笑

「非常識な、俺の釣り」

今、この表現をしても、ナンか気分良いです。笑い

クエを狙う

水温の高い時期にイワシをエサに底を狙うとエイやウツボもうるさいですが、クエが当たってくることも解りました。

千枚修行のグレ釣りを浅海奥でやっている時は置き竿で飲ませ釣りもよくやっていたわけで、浅海奥って底が荒いのでクエの子は時折釣れてたりしたんですね。また、イワシエサの釣りでモンスターを狙う釣りは、2015年に権現(外の浜沖)から始まって2016年からは大島港の赤灯前でやってたんですが、クエはシーズンに1、2匹くらいですが釣れました。

「串本の湾内って、狙えばクエは釣れる」

クエというターゲットは希少性や食味の良さから、いわゆる「超高級魚」と呼ばれるものですが、このターゲットを最高峰に据えてイワシエサの釣りを組み立てることで、この釣りに箔が付くような気がしました。

同じようでもマグロは、脱走マグロがターゲットになるので表に出せないわけですよ。(基本的に、釣り禁止のターゲットです)

インターネットにメディアを展開して串本のカセ釣りの普及活動もミッション(使命)と考えている僕には、釣っても表に出せないターゲットは釣っても仕方がないターゲットでもあったし、何より夏場のイワシフカセで巨大イズスミやクエを狙うような場所は、おおよそで「小割銀座」になっていて、とにかく狭いんですよ。(水の中はロープだらけ)

そんな場所で40㎏も50㎏もあるようなクロマグロが当たって来ても取れる気がしなかったし、これを取り込もうと思うとそれなりの道具立てが必要だし、その道具立てでマグロ以外のターゲットが当たってくると、もう道具が強すぎて釣り味なんて全くしないし、「うん、マグロは要らんな」となったわけです。

その点、クエは釣れたら見せびらかすことが出来るわけじゃ無いですか。「絶対にこっち(クエ)の方がエエわ」って思いましたね。笑

とにかく、小さくても釣れたらホントに嬉しいのがクエ

クエ狙いは試行錯誤を重ねて累計で20匹くらい釣った思うんですが、串本のカセ釣りでこの数を釣った人は、ここ10年では僕しかいないと思います。

まあ、サイズ的には全部「子クエ(3キロ前後から13キロまでだった)」なのでホンマモンのクエ釣り師には笑われるかもですが、湾内の釣りですからね。(サイズは仕方ないと思います)

ちなみに、蛇足かもですが、大島港の赤灯前のカセでは「今のクエやったんチャうか」ってアタリで何発吹っ飛ばされましたかね。

海底形状的に「クエが付きやすいポイント」があるんですよ。(ナンで知っているかと言うと、潜って見てきたから)

まあ、引退する人間のコラムなので余計なことは書かないですが、「赤灯前のカセにはクエは居る」、これは言い切ります。笑

釣ってみたいっていう人は「通ってください」ね。笑

詳しいことはこれに書いてます。興味のある人はどぞ

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兼崎 秀治串本大島カセ釣り研究所代表

投稿者プロフィール

串本大島カセ釣り研究所を運営しております、HN海信(本名:兼崎秀治)です。
波止釣り、磯釣りを経て、現在カセ釣りに夢中ですが、12歳から釣りやっているので、釣り歴は40年以上です。

現在後進の色々な人に釣りの魅力を伝えるべく、日夜邁進しております。どうぞよろしくお願いします。

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